雑文集合体

◆あかいひめ

昔々あるところに大変綺麗なお姫さまがいました。
そのお姫さまは小高い丘の上に建てられた城に住んでいました。
お姫さまは賢く綺麗だったので周りのみんなからはとても人気がありました。
だからお姫さまの周りはいつもみんながいて、お姫さまは淋しい思いをしないのでした。
お姫さまはいつも白い着物を着ています。
病弱なので毎日床に伏しているのです。
でもみんなはお姫さまを憐れんで周りにいるのではないことをお姫さまは知っているので憂鬱にはなりませんでした。
みんな、お姫さまのことが大好きだったのです。お姫さまは病弱で外には出れませんでしたが、本が好きだったのでいつもみんなに本を読んであげました。
みんなはニコニコとその本の物語に耳をすましました。
悲しい話があればみんなで泣き、優しい話ならばみんなでほっとしました。
怖い話ならばみんな耳を塞ぐのですが、指と指の間を開けて怖がりながらも物語を聞きました。
そんなみんなで楽しく過ごしていたある日、誰かがお姫さまに言いました。
「ねぇお姫さま。お姫さまは外に出たい?」
お姫さまは出たいけどすぐに体調を崩すので出られないと答えました。
お姫さまは、胸の内では外へ出て思いっきりみんなと遊びたいという欲求でいっぱいなのでした。それを聞いたある人がお姫さまの所へ来ました。その人はお姫さまに病弱であることを克服し、外へ出ていっぱい遊べるようになる方法を教えてくれました。
その人とは有名な薬師でした。
「……コドクというのですか?」
「はいお姫さま。コドクと言います。」
「して、どのような方法なのでしょうか?」
「まずは壺を用意しその中に悪毒な虫を大量に入れ、数日待ちます。するとその数日の間に中の悪毒な虫どもは一粒の薬となっておるはずです。その薬を誰かに飲ませるのです。」
「飲ませるのですか?」「はい。飲ませます」
「き、汚いのではないですか?」
「はい。汚いです」
「そんな汚い物をみんなの中の一人に飲ませるなんて私にはできません」「……お姫さま」
「何でしょう?」
「あなたは外へ出て遊びたいと申されました。ならばその望みを叶えたくばやらなければなりません。あなたのまわりにいる者達の中の一人でよろしいのです。飲ませなさい。これしかあなたが外へ出て遊ぶ方法はないのです」
低い声で薬師はお姫さまに言いました。
お姫さまはみんなと自分とを天秤にかけました。

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