彼女自身、生まれて直ぐに両親を亡くして、その養護施設で育った。 「今日は、哀しい天使のお話をします」 「これって、天使なの…?悪魔じゃないの?…」 「これは悪魔よ−!」 子供達は、描かれている絵を見て、思い思いの感想を述べた。 「じゅあ、これは?」 「うわぁ−、綺麗!!」 子供達がはしゃいで言った。 「ルシファ−という、神様から凄く愛されていた女天使よ。 優しくて、朗らかで、皆から、とても好かれてたの。 でも、ある日、ルシファ−は、神様から怒りを買って、天国から追い出されてしまったの。 行き場所を無くしたルシファ−は、サタンと名前を変えて、地獄に舞い降りて、そこで魔王になってしまったの・・・」 一人の男が花束を抱えて、ある物静かな場所にやって来た…。 男は花束を地に添えて、地をなぞり立ち上がると呟いた。 「英雄…、見ていてくれ…」 この男は、弱者に対しては無償で弁護を引き受けて『天使の弁護士』と呼ばれて、どんな裁判でも依頼者を有利に持ち込む有能な弁護士・成瀬領(大野智)だった。 しかし、これは彼の表の顔で、真の本当の姿は、TT年前にかけがえのない弟を殺した犯人を追い詰める事に人生の全てを掛けた[冷徹な復讐鬼=魔王]であった…。 一方、街中を疾走して犯人逮捕をする男がいた。 彼は芹沢直人(生田斗真)。 芹沢は渋谷東署で検挙率T番の実績を上げている。 しかし、過剰なまでに悪を憎む余り、行き過ぎた捜査で問題視される事も度々ある若手の熱血刑事だった。 芹沢が署内に戻ると中学時代の親友で職業不定の宗田充(忍成修吾)が交際女性への暴行容疑で事情聴取を受けていた。 芹沢は自ら宗田を取り調べる。 「弁護士が来るまでは、喋らねぇ!」 芹沢の上司係長・中西(三宅裕司)は、芹沢が過剰な取り調べにならぬ様に同僚刑事と交代させた。 不機嫌になりながら芹沢がデスクに戻ると、机の上に宅配便が届いていた。 「雨野…?誰だ…?」 差出人名義は「雨野真実(あまのまこと)」と書いてあり、中には赤い封筒と1枚のタロット【審判】カ−ドが入っていた。 なぜ、自分に送られて来たのか? 一体、誰なのか? さっぱり分からない芹沢が首をかしげている時、刑事課に強盗事件の出動要請の連絡が入った。 芹沢は直ぐに駆け出した。 そして、署内を疾走する芹沢は、宗田の弁護を担当する事になった弁護士・成瀬領とすれ違い際にぶつかってしまう。 「すみません!」 「いえ、刑事課はどちらですか?」 宿敵となる2人の男の直接的な出会いの瞬間であった。 「弁護士さん? もしかして…、宗田の?」 「はい、成瀬と申します」 成績は歩み寄ると芹沢に名刺を手渡した。 芹沢は頭を下げて受け取ると自己紹介をした。 「はじめまして。刑事課の芹沢です」 一瞬、成瀬が呆然となった。 「宗田は俺の中学の時の同級生なんです。 なんで、宜しくお願いします」 「はい」 成瀬は表情1つ変えずに答えた。 「それじゃ、急ぎますんで失礼します!」 走り去る芹沢の後ろ姿を見続ける成瀬領…。 翌日、図書館に勤める、しおりは出勤前に何気なくタロットカ−ドをめくって見た。 「運命の輪…。再会の暗示…」 図書館で本を整理している、しおりに成瀬が尋ねる。 「あの、建築の専門書を探しているのですが…」 「こちらです」 しおりは、案内しながら成瀬に尋ねた。 「建築関係のお仕事なんですか?」 「いえ、弁護士です」 「弁護士さん!? 「どうか、しました?」 「あっ、いえ、 弁護士さんって、皆、おじさんばっかりだと思っていました」 「そんな事ないですよ」 本の貸し出し手続きを終えると、しおりは成瀬を見て尋ねてみた。 「あの…、以前に何処かで、お会いしませんでしたか?」 「僕と…、ですか?」 少し躊躇する様子の成瀬。 「あっ、いえ、すみません。気のせいかも…」 「では、また」 一方、芹沢は係長の中西から捜査方法の事で厳しく忠告を受けていた。 翌朝、成瀬が事務所に出勤すると社員達が無罪判決の被告人からの感謝の礼状や多くの支援者からの手紙。 そして『天使の弁護士』と誉め上げるマスコミ記事を誇らしげに成瀬に見せた。 「僕が天使ですか…」 一方、芹沢の携帯に兄・典良(劇団ひとり)から、同夜に政治家で実業家の父・栄作(石坂浩二)が開くパーティに出席を促す連絡が入った。 そして、芹沢はパーティ会場に出向いた。 芹沢は父・栄作と同席中で少年時代に世話になった熊田弁護士に挨拶をした。 「所詮、お前は高卒の兵隊だ。 地べたはいずり回って、クズども追い掛け回して何が面白いんだ。 自分の将来をもっと考えたらどうだ? 成長のない男だな。 あれだけ、世話になった先生に申し訳が立たんだろうが」 父・栄作は立ち上がると息子に歩み寄って言った。 顔を合わせる度に反発し合う2人の親子…。 この日も芹沢は、父と旧知の仲で顧問弁護士の熊田の前で言い争いになってしまった。 親子2人の間に横たわる確執があった…。 その背景には、TT年前に芹沢が成瀬の弟・英雄(竹内寿)をナイフで刺殺してしまった事件があった。 睨み合う芹沢親子の仲介に熊田弁護士が入った時、熊田弁護士の携帯が鳴って、彼は席を外した。 そして、電話の相手は成瀬で公衆電話から掛けて来た。 「成瀬領です。 司法セミナーでお世話になった。 実は妙な噂を耳にしまして…」 「何っ……!?」 成瀬と話していた熊田弁護士が顔色を変えて動揺した。 「では、後ほど…」 革の手袋を嵌めていた成瀬は、受話器を静かに置いた。 パーティの翌日、熊田弁護士の死体が発見されて、芹沢たち刑事課は熊田弁護士の事務所の現場へと駆け付けた。 芹沢が遺留品の中から、自分に届いた物と同じタロットカードと殺害に使われた凶器のナイフが一緒に同一人物の雨野真実から届けられていた事が秘書の証言から判明した。 また熊田弁護士の着信履歴の最後が公衆電話であった事とその時刻にパーティで電話を受けていた事を芹沢自身が目の当たりにして目撃していた。 芹沢たちは混乱しながらも、熊田の携帯に頻繁に電話を掛けて来ていた人物を特定する為に捜査を開始する。 そして、中西がタロットカ−ドの出所を掴んだ。 送られて来た【運命の輪】のタロットカ−ドは、しおりが手伝うカフェ『ガランサス』のオリジナル商品であった。 しおりは、【審判】のカ−ドの意味を説明する。 「過去の罪への償いで、今まで避けて来た事と向き合う時が来た事を暗示しています」 中西は、しおりに凶器のナイフの透視を依頼した。 しおりの残像透視の結果、熊田弁護士は自らナイフを持ち、男と揉み合いになって、刺殺されたと告げた。 芹沢は、しおりの持つサイコメトラ−能力には半信半疑であった。 そして、捜査線上に熊田弁護士を恨んでいた林邦夫(きたろう)が容疑者として浮上して、芹沢が林のもとへ行こうとした時、林は成瀬を伴い自首して来た。 成瀬が同席のもとで、林の事情聴取が行われた。 林は、初めから殺意を抱いていた訳ではなく、熊田に殺されそうになり、揉み合いの末に殺してしまったと供述する。 林の家宅捜索をした結果、刑務所に服役中だった頃の林のもとに毎月、雨野真実から届けられていた大量の手紙が発見された。 雨野からの手紙の内容は、下記の様なものであった。 『貴方が受けたT2年という刑期は、明かに不当な量刑です。 貴方は、熊田の餌食になり犠牲になったのです。 熊田は当時、検事を辞めて弁護士に藏替えしようとしてました。 そこで、自らの能力を放送界に示す為に貴方を利用したのです。 貴方の雪辱を晴らす為には、その事実を何らかの手段でマスコミに公表すべきです。 運命は、自分の手で切り開くのです』 林に送られた雨野真実からの手紙は、どれも言葉巧みに林に復讐心を仰ぐものであった。 芹沢は、雨野真実によって、林を操り、熊田弁護士に謝罪させて、テ−プに録音してマスコミに流す為に呼び寄せたのだろうと推測した。 しかし、林は熊田弁護士から呼び出されたと言い張った。 芹沢は林に電話したのも、公衆電話から熊田弁護士を呼び出したのも、雨野真実だと気付いた。 芹沢は林が雨野真実に操られていた事が分かると感情を荒げながら、雨野との関係を激しく問い詰めた。 成瀬は穏やかな口調で芹沢に言った。 「芹沢さん、落ち着いて下さい」 「落ち着いていられますか! 罪のない人が死んだんですよ! 大切な家族を奪われた人の気持ちが、貴方には分からないんですか!?」 「それは、熊田さんに限りません。 罪が有っても、無くても。 豊かでも、貧しくても。 人は誰かにとって、大切な存在です。私も、貴方も」 同夜、成瀬は弟の英雄が亡くなった場所へ行き、弟の誕生日にハ−モニカをプレゼントして喜んで貰った事。 弟が将来、大きくなったら弁護士になって稼ぐと領に約束した日々の事を回想して、涙を流していた。 「英雄…、見ていてくれ…」 成瀬は、改めて復讐するべき誓いを立てた…。 翌日、殺害された熊田弁護士の息子(二宮和也)が待ち伏せして、成瀬を呼び止めた。 「お前か…、天使の弁護士なんて抜かしてんのは…」 「どなたですか?」 「息子だ。殺された熊田の。 お前、俺の親父が人を殺そうなんて、正気で言ってんのか?!」 「お父上が亡くなった事は、残念でなりません。しかし…」 「この野郎−!!」 熊田の息子、は成瀬の胸倉を掴むと壁際に抑え付けた。 成瀬は表情一つ変えずに熊田の息子に言った。 「みていて下さい。真実はTつしかないのですから」 その後、成瀬は熊田弁護士の殺害現場で容疑者・林の証言をもとに殺害の経緯検証が行われている現場事務所に出向いた。 「貴方が被害者役ですか?」 成瀬は直人に問いた。 「何しに来たんですか?」 「勿論、立ち会いに」 芹沢は成瀬の前に立ちはだかった。 「現場検証は関係者以外、立入禁止です」 「芹沢、通してやれ」 2人の無言の睨み合いの中で、係長の中西は成瀬の立ち会いを許可した。 「有難うございます」 成瀬は礼を述べると芹沢の脇を通り抜けて行った。 そして、林の供述通りに事件は再現されて行った。 芹沢はナイフを持つと、TT年前の中学時代に自分が殺人を犯した当時の光景がリアルに甦り、あぶら汗を流して動転する。 そんな明かに動揺している芹沢の様子と秘めた心情を成瀬は、決して見逃してはいなかった。 「最初にナイフを手にしたのは、被害者の方です。 よって、弁護人は正当防衛による無罪を主張します」 林の弁護を担当する成瀬は、かつて熊田弁護士が【芹沢を無罪にした】ように林の無罪を主張した。 芹沢は、自分の裁判時に弁護した亡き熊田弁護士の言葉と成瀬の言葉が重なり合い言葉を失っていた。 「依頼人は、嘘を付いていません。 真実は捩曲げられないという事です」 成瀬は芹沢の前に歩み寄って言ってみせた。 芹沢は酒を煽って酔っても、過去に自分の犯した過ちの呪縛から解き放されずに苦悩する…。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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