第9話「真犯人は俺だ〜知りすぎた男の悲劇」
終に芹沢(生田斗真)は、成瀬(大野智)の正体が死んだ筈の真中友雄で、彼こそが真犯人『雨野真実』である事を突き止めて、成瀬の事務所に駆け付けるが成瀬はいなかった。

その頃、芹沢の友人・宗田は大隈の部下達に拉致されて暴行を受けていた。
そこに葛西(田中圭)の姿を見つけて助けを求める。

「許して下さい!!助けて下さい!!」

「こいつは、中学からの親友なんです。
だから最後は自分でケリをつけます」

葛西は大隈と部下達を帰らせて、宗田と2人きりになる。

「お前は、そんな事をする奴じゃないよな?」

「お前の処理を命じたのは、典良(劇団ひとり)さんだ。お前は死ぬしかないんだよ」

「もう、お前には迷惑かけねぇよ。だから助けてくれよ。
頼むよ、葛西…俺達、友達じゃねぇのかよ!?」

必死で懇願する宗田に葛西は、一発だけ殴りつけて言う。

「いいか?お前は今死んだんだ!二度と俺達の前に現れるな」

葛西は、親友の宗田を見逃すと倉庫を後にした。

葛西が倉庫から出ると典良の妻・麻里(吉瀬美智子)から連絡が入り、2人は車の中で会う。

そして、麻里が自宅に帰宅すると玄関のドアに赤い封人の抱き合う盗撮写真があり、葛西に差し出した。

麻里は、「宗田の仕業だ」というが、葛西は「二度、僕らの前に現れる事はないから心配ない」と告げた。

暴行を受けた宗田は、何とか命拾いしたものの満身創痍で動けないでいた。

そこに歩み寄って現れたのは出張に行っている筈の典良だった。

「典良さん…!」

「酷いやられ様だ」

「違うんですよ…僕はただ、お兄さんに事実を知らせ様としただけなんです。
実は葛西はお兄さんを裏切って奥さんと…」

「そうらしいな…」

「知ってたんですか!?」

「お前には感謝してるよ。気付かせてくれて。
知らないまんまじゃ、大恥じかいたか分からないからな…」

典良は、怯える宗田に労る言葉を掛けタバコを差し出した。

「どうしたら良いか本当、悩んだんだ。
それでやっと結論が出た」

そう言い終えるとライターに火を燈して、宗田に差し出した。

「分かって貰えれば良いんですよ。悪いのは葛西です」

典良に許されたと安堵して、宗田はタバコを一口吸った瞬間、全身に麻痺を起こして、のた打ち回り息絶えた。

典良がタバコに青酸カリを仕込み殺したのであった。

「こんなバカな事するからだ…」

典良は、宗田の胸ポケットから盗撮写真を抜き取ると握り潰して、冷たい瞳で呟き立ち去った。

その頃、葛西と麻里は、話し合った末に別れる決意を固めていた。

「麻里さんの物まとめておくから。
会えなくなる事なんて考えた事もなかった…
貴女と過ごした、この1年幸せだった…」

葛西は泣いて麻里に呟いた。

「私はずうっと、あの家に押し潰されそうだった…
でも、貴方が側にいてくれたから…
貴方が支えてくれたから、どうにか耐えてこられた。今まで有難う…おやすみ…」

「おやすみなさい…、奥様…」

その頃、成瀬の居場所を突き止めようとしていた芹沢に宗田からの着信が届く。
電話に出るが無言の様子に不審を抱き必死で宗田の名を呼ぶが一向に返事はない。

殺害現場で宗田の携帯を使い、芹沢に電話をしたのは成瀬だった。

芹沢は宗田の身に何か起こったと察して、携帯電話の電波で発信エリアを調べると現場へと急いた。

現場に辿り着くと変わり果てた姿の宗田が横たわっていた。
芹沢は、宗田の亡骸にすがりつき泣き叫び、真犯人である成瀬への怒りが頂点に達する。

芹沢からの電話を受けた成瀬。

「貴方の本当の姿が判りました」

そして成瀬が芹沢の前に現れた。
芹沢は成瀬を思いっきり殴り付ける。

「正直に言え…あんたの正体は英雄の兄・真中友雄。
そして、連続殺人犯の雨野真実だ!
違うか!?」

「私は真中友雄で真犯人・雨野真実です。
そう言えば満足ですか?」

芹沢は成瀬の胸倉を掴んで声を荒げる。

「ふざけんな!!あんたが宗田を殺したんだ!熊田さんも石本も…池畑も宗田も!皆、あんたが殺したんだ!!」

「人殺しは、私ではなく貴方です。真中英雄の。
そして、彼の家族の人生までも貴方が一瞬で奪ったんです。
大切な人を無惨に失った悲しみ、今の貴方なら解るはずです」

「だからって…だからって人を殺して良い訳ないだろ!!
どれだけ他人を巻き込めば気が済むんだ…
何で俺じゃないんだ?あんたの目的は俺だろ?やるんだったら俺を殺せ!」

「私が真犯人だと、おっしゃるなら、確実な証拠を持って来て下さい」

「これ以上、犠牲者は出させない。あんたは、俺が必ず捕まえてみせる」

「貴方の無念さは良く解ります。だから早く、私を捕まえて下さい」

成瀬は、冷たい眼差しで言い放して去って行った。

そして、暗室に貼られた芹沢の写真を見つめて成瀬は呟いた。

「やっと、会えましたね…」

一方、しおり(小林涼子)は、成瀬が真中友雄であった事を知って、自分が気付いてあげられなかった事を責め悔いて泣いていた。

翌日、宗田の司法解剖の結果、暴行の痕跡はあるものの死因は青酸カリによる中毒死と判明した。
そして、現場から1本の万年筆が押収されていた。

一方、典良が出張から戻って来ると葛西に問いた。

「社長、お疲れ様です…」

「あぁ…、で例の件はどうなった?」

「えぇ、問題なく」

「そうか、ご苦労だったな」

典良は葛西の肩を叩くと父・栄作(石坂浩二)の元へ行き挨拶をした。

「只今、戻りました」

「ご苦労だったね」

同時に芹沢がオフィスにやって来て、栄作・典良・葛西の前で宗田が死んだ事を告げた。

「死んだ…!?」

葛西が呆然となった。

「殺されたんです。この中にその被疑者がいます」

「馬鹿な事を言うんじゃない!また人殺しを作る気か!?」

栄作は息子を怒鳴り付けた。

しかし直人は、現場に落ちていた葛西の名前が刻み込まれた万年筆を見せる。

「何でコレが!?」

普段、デスクに置いて有る物が何故、現場に落ちていたのかさえ葛西自身が判らなかった。

実は典良が宗田を殺した時にわざと葛西の万年筆を落として、立ち去っていたのであった。

芹沢と連れ共られて廊下に出て来た葛西は、「自分は宗田を殺していない」と言う。

「葛西、俺はお前を信じてる。でも事情を聞かない訳にはいかないんだ」

「葛西くん…?」

偶然、2人の前に麻里がやって来たが、何も答えずに署に向かった。
オフィスから出て来た典良は麻里に宗田を殺した容疑だと説明する。


オフィスに戻って来た典良に対して、選挙を控えている栄作は釘をさす。

「スキャンダルの露見とどんな手段を使っても葛西を犯罪者にするな!」

事情聴取を受けている葛西は、一向に宗田殺しの否認を続けて黙っていた。
そして、葛西自身の潔白を証明するにはアリバイが必要であった。

取調室に案内された成瀬がやって来た。

「葛西さんの弁護を引き受ける事になりました」

芹沢は成瀬を表に連れ出して問う。

「今度は何です?何が狙いですか?」

「お父様の御依頼です。葛西さんを救って欲しいと」

「あんたが葛西に罪をなすり付けたんだろ!?何が目的だ」

「目的は、貴方と同じです。何者かが葛西さんを陥れ様としているのを証明する事です」

「仕組んだのは、あんただろ!?」

「助けてあげたくないんですか?無実の葛西さんを」

「言え…、宗田を殺した犯人は誰なんだだ!」

「それを探すのは、貴方の仕事です。
葛西さんの無実を証明したければ、必死で証拠を見つけて下さい」

芹沢は、兄・典良に電話を掛けて、「犯人は成瀬だから今すぐ葛西の弁護を外して欲しい」と頼み込む。

「お前どうかしてるぞ?この前は、お父さんが人殺しだと疑って、今度は成瀬さんか?」

「本当なんだ!」

「お父さんが決めた事だ。自分で言え。じゃあな」

芹沢は相手にして貰えずに電話を切られて取調室に戻った。

「先生、俺は殺してないんです」

葛西は隣に座る成瀬に告げる。

「助かる方法は1つ。真実を全て話す事です。
真実を偽る者、救われる事はありません」

その言葉は、葛西への言葉でもあり、目の前にいる芹沢への言葉でもあった。

捜査の結果、葛西の乗った車が宗田の死亡推定時刻の30分前に現場付近を通走していた記録が残されていた。

「お前、現場に…?このままじゃ起訴されるぞ!?
良いのか?殺人犯になるんだぞ!?どこか寄り道でもしなかったか?
ガソリンスタンドでもコンビニでも。
お前のアリバイを証明出来そうな奴がいたら、俺が絶対に捜し出してやる!何で黙ってんだよ!?」

その後、成瀬は栄作と典良のいるオフィスに出向いた。

栄作は葛西の状況を聞く。

「で、葛西はなんと?」

「自分はやっていない。信じて欲しいと」

「起訴されるんですか?」と典良が尋ねた。

「いえ、犯人は他にいる筈です。
葛西さんの無実も時期に証明されるでしょう。
真実は必ず明かになる筈です」

黙った典良の表情が硬直していた。

捜査本部では葛西の通話記録から、宗田が殺される直前に典良の妻・麻里電話している事が判明した。

芹沢は、兄の携帯番号ではないが名義人が兄の名前になっている事から電話を掛けてみた。

「もしもし?…麻里さん?」

「直人くん…?どうしたの?」

「いや、葛西の通話記録を調べてたら、この番号が…」

「あぁ、迎えに来て貰ったりするから良く電話するの」

「昨日の夜も?」

「えぇ…、ねえ?葛西くんは、人を殺す様な人じゃないわ」

「判ってます。じゃあ」

電話を切ると係長・(三宅裕司)が葛西の自宅とホテルの家宅捜査の令状が出て捜査が始まった。

捜査の結果、宗田の鞄の中から兄・典良と麻里のツ−ショット写真が見つかった。

芹沢は、その写真を持って典良の元を訪ねると何故、宗田がこの写真を持っていたのか心当たりがないか?と尋ねたが、典良は判らないない返答した。

そこへ父・栄作がやって来た。

「家族の職場を家宅捜査とはな。しかも葛西は、お前の友人だろう。
親子の縁を切った後は、友人との縁を切るつもりか?」


捜査をしていた同僚の刑事・高塚薫(上原美佐)が芹沢を庇う。

「息子さんは、葛西さんの無実を証明する為に捜査してるんです」

「こいつは、もう息子なんかじゃありません」

栄作は言い放すと部屋を出て行った。

そして、葛西の机の中から、宗田の殺害に使用された物と同じ成分の青酸カリの入った小瓶が発見された。

芹沢は、葛西の犯行だとは信じられずに「別の誰かに嵌められた」と係長・中西に訴えた。

しかし、証拠が出た以上は仕方のない事で、葛西は被疑者として送検される事になった。

そして、中西は芹沢たちに事件当夜の行動と青酸カリの入手経路と裏付け捜査を命じた。

捜査に行こうとしない芹沢に成瀬が現れて問いた。

「諦めるんですか?葛西さんは、まだ黙秘を続けています。
このままでは、無実の友人を殺人犯にしてしまいますよ」

そう言って立ち去る成瀬を芹沢は追い掛けて頭を下げた。

「お願いします!もう…、俺以外の人間を苦しめないで下さい。お願いします!!」

芹沢は成瀬の前で土下座をして悲願する。

「葛西を…、葛西を助けてやりたいんです。
俺はどうすればアイツを救ってやれるんですか!?」

芹沢は成瀬を見上げながら問いた。

「いいんですか?真実が貴方の胸を貫く事になっても?」

「構いません。それでアイツが救くえるなら」

「人は大切な誰かを庇う時、真実を隠すものです。
それを1番、解っているのは貴方の筈では?
楽しみですね…貴方が真実を知った時、どんな選択をするのか…」

成瀬は言い終えると帰って行く。

成瀬が事務所の前で足を止めた。
事務所前には、帰宅する成瀬をしおりが待っていた。

「気が付きませんでした…
私に傘を貸してくれた男の子の後ろ姿が成瀬に似ている事が。
あの時と同じ様に哀しい背中だったのに…
ごめんなさい…
私がもっと早く気付いてたら…」

「…何の事ですか?…」

「もう止めて下さい!!
友雄さん…、貴方は本当は優しい人です。
11年前、私に傘を貸してくれた時の優しい笑顔は、今も変わっていません!」

「…あの頃の僕は…、もういないんです。
もう…、止められないんだ…」

しおりに告げて暗いオフィスに入った成瀬は、涙を零していた。

その後 しおりは刑事課の芹沢の元を訪ねた。

「私に手伝える事はないですか?犯人を止めたいんです!今からでも」

芹沢は、宗田に届いたタロットカ−ドを机の上に置いた。

しおりはカ−ドの上に手を充て透視を始める。

透視の結果、男女の抱き合う写真の残像を見る。
芹沢は典良と麻里の写真を見せたが、しおりの透視した男は若い眼鏡を掛けた男だった。

しおりは、机の資料で置かれていた葛西の写真を指差した。

「この人です!」

芹沢の脳裏に成瀬の言った言葉が甦った。

『人は大切な誰かを庇う時、真実を隠すものです』

「大切な誰か…?」

芹沢は留置されている葛西の元ふ駆け出した。

一方、典良は大隈と電話で話しをしていた。

「予定通り進んでいる。青酸カリも役に立った」

「アリバイも問題ありません。社長は九州に居た事になってますから」

「流石、プロだな」

夜の公園で山野圭太(清水優)は、盗撮した写真を見て笑みを浮かべていた。

その盗撮された人物は典良であった。

留置所の葛西の元へ辿り着いた芹沢は半信半疑で問いた。

「違うよな…?お前が麻里さんと…葛西、何とか言ってくれよ!
そんな事ないよな?兄貴を裏切ってないって言ってくれよ!!」

しがみ付いて葛西に問いただしても葛西は無言で何も答えない。

「やっぱり、お前は無実だ。
宗田が殺された時間、お前は麻里さんと一緒に居たんだ」

「違う…」

「だから、お前は黙っていたんだ。
麻里さんを庇う為に」

「俺がやったんだよ…俺が宗田を殺したんだ!」

葛西は立ち上がると芹沢の足元に縋り付き泣きながら叫んだ。

「あの人を巻き込まないでくれ…!頼む…
俺がやったんだよ!!
信じてくれ!!犯人は俺だっ!!頼む…」

成瀬は母と英雄と3人で撮った写真を見つめながら語り掛けた…。

「もうすぐ…、全て終わるよ」



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